| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-013 (Poster presentation)

土壌改良材が植物の放射性セシウム吸収と土壌理化学性に及ぼす影響

*杉浦佑樹, 竹中千里, 金指努 (名大院・生命農)

【背景と目的】土壌中の放射性セシウム(137Cs)除去の方法の一つとして、植物に吸収・蓄積させるファイトレメディエーションがある。これは廃棄物発生量を少なくできる利点があるものの、遅効性であることが最大の課題となっている。また、土壌中の陽イオン量やpHなどが137Csの生物利用可能性に影響をあたえることが知られている。本実験では土壌改良材が137Csの化学形態に与える影響を調べるとともに、ファイトレメディエーションの効率化について評価を行うことを目的とする。

【材料と方法】2012年5月20日に、福島県川俣町の圃場において対照区(Control区)、硫酸アンモニウム施肥(40 g(NH4)2SO4/m2)区(NH4+区)、粉末硫黄施肥(100 gS/m2)区(S区)を設置し、セイタカアワダチソウなど数種を植栽した。暑さと乾燥により枯死した個体が発生したため、6月9日に追加で植栽するとともに稲わらによりマルチ処理を行った。7月31日に初期施肥量と同量の追肥を行い、10月21日に土壌、植物体および稲わらを回収した。土壌は137Cs濃度、pH、交換態陽イオン濃度の測定を行った。植物体および稲わらは洗浄後に137Cs濃度の測定を行った。

【結果と考察】実験開始時と比較し、土壌表層中137Cs濃度はNH4+区とS区において有意に低下していた。土壌pHはコントロール区で上昇しており、NH4+区ではわずかに低下、S区では大幅に低下していたが、変化は表層においてのみであった。表層から15 cmまでの範囲では各処理区とも表層からの137Csの浸透は見られなかった。植物の地上部・地下部組織では各処理区とも顕著な137Csの蓄積は見られなかった。稲わらでは137Csの蓄積は見られなかったが、微生物が137Csの輸送に関与するとの報告もあることから、微生物に注目した再測定結果も報告する。


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