| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-031 (Poster presentation)

伐採枝条が間伐後の土壌の窒素動態に与える影響

*鈴木伸弥(京大院・農),福島慶太郎(京大・フィールド研),吉岡崇仁(京大・フィールド研)

近年日本の人工林で、間伐材の利用が提唱されているが、林地からの枝条除去が土壌の窒素動態に与える影響は明らかではない。森林の伐採では、硝化速度の上昇と、植物による硝酸吸収の減少による、硝酸流亡量の増大が知られている。しかし、土壌に伐採枝条などの新鮮な有機物が存在すると土壌微生物による無機態窒素の不動化が促進される可能性がある。そこで本研究では、間伐時に枝条が散布された場合と除去された場合の土壌窒素動態を比較し、間伐による窒素循環の変化に果たす枝条の役割を明らかにすることを目的とした。調査は、京都大学芦生研究林内のスギ人工林集水域で行った。2012年5月に本数で約44%の搬出間伐を行った。その後、未間伐区(C区)、間伐区(T区)、間伐区の一部に約2kg/m2の伐採枝条を散布した枝条散布区(B区)を設定した。各区でイオン交換樹脂を用いて土壌表層0cmの無機態窒素流入量、10cmの流亡量を算出した。また、0-10cmの鉱質土壌を採取し、無機態窒素現存量及び純無機化・硝化速度を算出した。またレジンコア法を用いた現地培養を行い、窒素収支から植物の窒素吸収量を推定した。土壌での純無機化・硝化速度は、T区で常に高い傾向を示した。B区では2012年8、11月に、最も低かったが、翌年5月以降はC区とほぼ等しく推移した。硝酸態窒素の流亡量はC区で最も少なく、2013年5月からはB区で最も高くなった。植物による窒素吸収量は、C区で最も多く、B区で最も少なかった。以上から間伐により植物の窒素吸収の減少と、無機化・硝化速度の促進により窒素流亡量が増加した。枝条の存在は、無機化・硝化速度の低下を招き、枝条由来の有機物による微生物の窒素不動化が示唆されたしかし、その効果は間伐後半年程度で、その後は無機態窒素のソースとして機能し、植物に吸収されずに流亡する可能性が考えられた。


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