| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S15-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

生態学におけるAICの誤用

粕谷英一(九大・理)

生態学におけるデータの解析は、次第に確率モデルを意識して行なわれるようになってきており、実態により近い複雑なモデルが使われるようになってきた。生態学で使われる、データに基づく推論には、パラメーターの値や区間の推定、検定、予測の最適化、モデル間の相対的な支持の強さの推定など、さまざまな種類があるため、データとモデルの関係から結論を引き出す方法とその意味を理解し、方法の意味を区別することはとりわけ重要である。最近、AIC(赤池情報量規準)最小のモデルを正しいモデルと見なしている研究例をよく見かけるが、それは妥当ではないことを説明する。AICは予測の最適化の目的で提案され、データを生成したモデルという意味での正しいモデルを選ぶことを目的としていない。予測の最適化と正しいモデルを選ぶことが同じかは、AICの提案後すでに検討されており、一般に両者は異なることが明らかにされている。AICと正しいモデルを選ぶことのちがいを現実的かつある程度一般的な状況で説明し、その食い違いはデータの量が増えても(サンプル数無限大でも)解消せず比較的大きいことを示す。また、AICの差の絶対値に閾値を設けて、AICの他のモデルとの差の絶対値がその閾値を超えたときにAIC最小のモデルを正しいモデルとする方法についても検討し、やはり正しいモデルを選べないことを説明する。


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