| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T04-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

微量DNA・シングルセル解析技術の生態学研究でのポテンシャル

*鏡味麻衣子(東邦大・理), 石田聖二(東邦大・理)

微量DNA・シングルセル解析技術が生態学の中で活用される例としては、第1に形態識別や培養が困難な微小生物の分子系統・多様性の把握が挙げられよう。実際、バクテリアや菌類、藻類などの微生物、原生生物の同定や多様性把握の上で威力を発揮している(島野らの講演、石田らによる講演で紹介)。これらの技術により「見えているのに手の届かない」歯痒さが一気に解消され、形態とDNA情報の一致や、寄主寄生関係など環境DNA解析だけでは捉えられなかった対応関係を描き出せる。また、種名(形態)と合致したDNAデータベースが整うことにより、次世代シークエンサーを用いた網羅的解析においても、検出された生物の分類群や機能を把握した形で、多様性を評価することが可能となる。

微量DNA・シングルセル解析技術は、シンプルな活用例だけにはとどまらない。花粉1粒DNA分析で先駆的に示されてきたように、花粉のソースや送粉距離、送粉者の貢献度などを推定でき、送粉系の生物間相互作用や植物の繁殖生態への理解が進む(阿部らによる講演で紹介)。また最近では「シングルセル・ゲノミクス」と呼ばれるように、一細胞から全ゲノム配列を取得することさえ可能となっている。

これらの方法は微量なDNAを扱う上でのコンタミネーションや、細胞を集める手間がネックとなるが、様々な技術(セルソーター、酵素)を併用する事で効率的な解消が可能である。また、FISH法、定量PCR法、次世代シークエンサーなど最先端の方法と組み合わせる事で、生態学の分野において、更に威力を発揮すると予想される。本企画集会は、先駆的に微量DNA・シングルセル解析技術を生態学研究に取り入れてきた講演者らが話題提供を行う。また、質疑応答や総合討論を通じて、萌芽的なアイディアの創出や技術の情報共有をはかりたい。


日本生態学会