| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T08-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

台風撹乱が林内微気象と土壌炭素動態に及ぼす影響の観測結果と考察

戸田求(広島大院・生物圏)

2004年秋,北海道には訪れることが稀な大型台風が道北部を通過した。この台風通過により,道北部に広く優先するダケカンバの若齢森林では,大量の葉群が吹き飛ばされ,次年時以降の葉群動態に大きく影響した。この葉群動態はまた,同森林の生態系炭素収支も大きく変化させた。一方で,生態系炭素収支は葉群動態だけではなく,葉光合成機能(生物的要因)の変化によっても影響された可能性が高かった。しかし,どのような生物的要因や環境条件の変化(非生物的要因)が生態系炭素収支に影響を及ぼしたのかについては未だ解明されていなかった。そこで,これまでに得られた生態系炭素収支に係るフラックスデータと簡単な生態系モデルを用いて,上記のような生物要因,非生物要因が生態系炭素収支に及ぼす影響を定量的に評価するための要因解析が行われた。

さらに,撹乱について改めて検討した際,一般に台風のような撹乱の系への影響は系空間全体に均一に生じたとはいい難い。ゆえに撹乱が生態系に及ぼす影響の一般的な論議に広げていくためには,できるだけ同程度の台風撹乱を擬似的に起こし,撹乱前後の葉群動態が林内微気象環境や炭素動態に及ぼす影響について調べることが評価を行う代替的な手法の一つとして考えられた。そこで,本発表においては,生態系炭素動態の逆推定解析から得られた結果の紹介を行うとともに,実際に台風撹乱が見られた森林地からほど近い場所を対象にして行われた台風模倣実験からの林内微気象および炭素動態(ここでは土壌炭素動態)に関する結果についても紹介する。


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