| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T11-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

侵入昆虫の食草転換の進化プロセスとその応用的意義

深野祐也(九大・理)

外来生物で起きている急速に進化に注目することで、生物の新奇形質や生活史、あるいは生物間相互作用などの創出過程を直接的に観察可能な場合がある。本研究では、外来の植食性昆虫で生じている現在進行形の食草(宿主)範囲の拡大に注目し、その進化プロセスを検証した。植食性昆虫における食草拡大は、食草転換を通じた種分化への最初の段階として、またスペシャリストからジェネラリストが生じる進化プロセスとして、非常に重要である。また植食性昆虫の食草拡大は、作物害虫で一般に見られる現象として応用的にも重要である。しかし、植食性昆虫の食草拡大がどのような進化プロセスによって引き起こされるのかは、ほとんど解明されていなかった。

植食性昆虫のブタクサハムシは、原産地のアメリカではブタクサを食草とし同所的に生育しているオオブタクサを利用しない。一方、日本に侵入したハムシは、ブタクサだけでなくオオブタクサを激しく食害している。このことは、日本のハムシ個体群で現在進行形の食草拡大が生じていることを示している。われわれは、原産地(アメリカ)と侵入地(日本)両方のハムシ・オオブタクサ集団を用いた実験により、ハムシの利用能力だけでなく、オオブタクサの抵抗性の変化が侵入地でのハムシの食草拡大に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この結果は、植食性昆虫の食草拡大を考える上で、植食性昆虫の利用能力だけでなく食草の抵抗性の進化を認識する重要性を示唆している。本講演では、これらの結果を紹介するとともに、食草拡大の進化プロセスを明らかにすることが、またより一般的に外来生物で基礎的な研究を行うことが、どのように応用生態学的な課題に対して新しい示唆を与えるのかも議論したい。


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