| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T21-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

陸水生物多様性に迫る危機とマクロ生態学の重要性-趣旨説明にかえて

*松崎慎一郎(国環研),赤坂宗光(農工大)

陸水生態系は、富栄養化・護岸化・外来種の侵入など様々な人間活動の影響を強く受け、グローバルスケールでその劣化と生物多様性の損失が顕在化している。こうした生物多様性や生態系の時空間的な変化を評価・予測するためには、マクロ生態学的なアプローチが有効である。また、政策面や国際的な取り組み(愛知目標など)においても、広域モニタリング手法・指標の開発や保護区の選定など国土スケールの保全対策の提案が強く求められている。

生物多様性広域評価を行う上で、「データの収集・統合」と「適切な指標や解析手法の選択」が大きな鍵となる。これまで陸水域では、水質汚濁指標生物やCODなどの水質指標を用いたモニタリングや評価が主流であったため、必ずしも生物多様性の評価に活用できる形でデータの整備がされてこなかった。陸水域における生物多様性の評価や地図化を進めるためには、散在しているあるいは電子化されていないような生物の分布に関するデータを網羅的に収集し、データベース化する地味な作業が不可欠であるが、シノニムの統合や時間的あるいは空間的な解像度の異なるデータの統合など留意する点も多い。一方で、生物多様性を定量的に評価するには、今後の広域モニタリングの実施も踏まえると、複数の簡便かつ鋭敏な指標を選定もしくは開発することが必要となる。さらに、指標の算出や保護区選択を行う上で解析手法の習得も欠かせない。

本集会では、上記のような課題に挑戦し、水生植物や淡水魚類を対象に全国もしくはアジアスケールで行ったマクロ生態学研究の最新の成果について紹介する。また、アジアの生物多様性の現状や変化、多様性の減少を引き起こす駆動因、最新のマクロ生態学的手法の有効性や問題点、政策へ貢献などについて議論を深めたい。


日本生態学会