| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T25-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

CO2噴出地の生態学

*彦坂幸毅, 上田実希(東北大), 長田典之(北大), 小野田雄介(京大)

大気CO2濃度の上昇は、様々な時間スケールで様々な生態系プロセスに影響を与えると予想される。これまで様々なCO2上昇実験が行われているが、数10年以上の実験は容易ではない。CO2噴出地は、火山由来のCO2が地表に漏出する場所であり、極めて長期間の高CO2環境が維持されており、「未来の生態系」として優れた研究対象である。我々は青森、秋田、山形、富山にある7つのCO2噴出地を対象とし、様々な研究を行ってきた。現地調査としては、環境記載(Onoda et al. 2007 Ecol Res)、葉特性に対するCO2などの環境の影響(Osada et al. 2010 Oecologia)、樹木伐採3年後の植生遷移(Onoda et al. 2005 Phyton)、リター分解、土壌無機化の解析などを行った(本大会にて伐採11年後の植生遷移について報告する:PA1-202 CO2 噴出地における植生遷移 3月15日)。さらに、共通圃場実験と遺伝解析により、高CO2域に生育する植物が高CO2環境に適応進化している可能性を検証した。これまでに、青森のオオイタドリと山形のオオバコを同時に解析した研究では、高CO2に適応している証拠として両種に共通した傾向を見いだすことはできなかったが(Onoda et al. 2009 New Phytol)、山形のオオバコをさらに詳細に調べた結果、高CO2域に生育する集団と通常CO2域に生育する集団の間に様々な形質の違いを見いだした(Nakamura et al. 2011 Oecologia)。さらに各地のオオバコを解析した結果、高CO2域に生育する集団は、気孔が小さく、最大気孔コンダクタンスが低く、地上部/地下部比が大きいという形質が共通して見いだされた。この結果は、高CO2環境が選択圧となり、植物の形質に進化的変化を引き起したことを示唆する。


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