| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-28 (Oral presentation)

マングースのコントロールによって奄美大島の野生動物はどこまで回復したか

*杉村乾(長崎大・環境), 石田健(東大・農), 阿部慎太郎(環境省), 永井弓子(奄美野鳥会), 亘悠哉(森技協会), 鑪雅哉(環境省), 高美喜男(奄美野鳥会), 橋本琢磨(自然研), 山田文雄(森林総研・野動)

奄美大島の森林性動物はマングースの侵入と伐採による影響を受けてきた。本研究では哺乳類5種と鳥類20種について、1979年のマングース侵入後の 1985年から防除事業により大幅減少した2010年までの間に4つの期間を設定し、マングースが高密度で生息していた地域での変化を追った。これらの種の増減パターンを区分したところ、マングースの侵入後に観察数が減少した種には2つのパターン、その他の種には3つのパターンが見られた。前者の2グループにはマングース減少後に数の回復が見られた7種(グループA)と見られない7種があった。グループAはアマミノクロウサギ、 アマミトゲネズミ、アマミヤマシギ、オオトラツグミ、ルリカケス、リュキュウカラスバト、シロハラであり、南西諸島固有種が多く含まれていた。これらをマングース侵入の影響がとくに大きかった種群と仮定し変化を見たところ、調査域でマングース密度が高まりつつあった1993-94年のレベル近くまで回復した種が多かった。これらの種は調査域にマングースが侵入し始めたと推定される1985-86年に比べると総じて大幅な減少が見られたことから、マングースの数の増加とともに急激に生息数が減少した可能性が考えられる。同時に行われていた森林伐採の影響も考えられるが、老齢林への依存度が高いことが確認されている鳥類、キツツキ類、カラ類、キビタキなどは1980年代から90年代にかけては減少していないので、その影響は相対的に小さいと推定される。マングースの大幅減少後も減少している種群を含めて今後もモニタリングを続け、コントロールの成果を示すことが必要であろう。


日本生態学会