| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-31 (Oral presentation)

9樹種の温帯広葉樹における開葉時期と枝および幹の道管形成時期との関係 ―落葉性および常緑性の異なる管孔性を持つ樹種間での比較―

*高橋さやか(京大・農),高橋絵里奈(島大・生資),岡田直紀(京大・農)

本研究では、生理生態学的観点から葉のフェノロジーと枝および幹の道管形成との時期的関係を、温帯の同じ場所に生育する、落葉性および常緑性の、異なる道管配列を持つ樹種間で比較することで、それらの樹木がどのような時期的関係で葉の展開と道管形成を行うかを明らかにすることを目的とする。

京都大学フィールド科学教育センター附属上賀茂試験地に生育する、林冠を形成する落葉性の環孔材樹種、散孔材樹種、半環孔材樹種、および、常緑性の環孔材樹種、散孔材樹種、放射孔材樹種について、幹の成長錐コアと枝を春先から2週間毎に採取し、葉のフェノロジーを1週間毎に観察した。採取した試料を用いて、当年の年輪形成の最初に形成された、年輪界から1列目の道管列(初形成道管列)の木化を顕微鏡で観察した。

その結果以下のことが判明した。すなわち、落葉性環孔材樹種では、開葉時に枝と幹の初形成道管列が木化し、落葉性散孔材樹種では、開葉時に枝の初形成道管列が木化するが、その後、数週間後に幹の初形成道管列が木化した。また、落葉性半環孔材樹種、常緑性環孔材樹種および常緑性散孔材樹種では、落葉性環孔材樹種と同様の傾向の個体と、落葉性散孔材樹種と同様の傾向の個体が見られた。常緑性放射孔材樹種においては、落葉性散孔材樹種と同様の傾向が見られた。以上の結果から、落葉性の環孔材樹種および散孔材樹種だけでなく、その他の落葉性および常緑性の、異なる道管配列を持つ樹種において、枝および幹の道管形成と葉の展開との時期的順序が明らかとなってきた。


日本生態学会