| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-25 (Oral presentation)

ペア生活する生物における性機能分業:可塑性が適応進化を促進する

*山口幸(神奈川大・工),巌佐庸(九大・理)

Charnov (1982) によると、海洋固着性生物では、繁殖集団が小さいときに同時的雌雄同体性が進化しやすい。ところがカイメンなどの中に閉じ込められて住むペアのエビは、雌雄同体ではなく、雌雄異体である。長期に渡ってペアで繁殖する2個体では繁殖成功は等しく、個体間で利害のコンフリクトがない。ペアが使える資源に限りがあり、雄として繁殖するために最低限の資源投資が必要なとき、ペアは小さな雄と大きな雌にサイズと性役割を分業するのが、適応度を最大化できる。この状態は、2個体に利害の対立が存在しないため進化で簡単に実現するはずと予想された。そこで、次の進化ゲームモデルを展開した。

閉鎖空間にPlayer 1 とPlayer 2がいる。進化の結果を求めるため次の3つの進化力学を考えた:[1] No-adjustment:Player 1, 2とも自らの遺伝子型によって決まった表現型をとり、遺伝的力学に従って適応する。[2] One-player adjustment:Player 1 が自らの遺伝子型による挙動をとり、Player 2 がそれをみて適応度最大の表現型をとる。[3] Two-player adjustment:Player 1が遺伝子型による挙動をとり、Player2がそれをみて適応度最大の挙動をとり、Player1はそれをみて取り替える。

進化の結果:[1] 形質が遺伝子だけで決まるNo adjustment dynamics では、ペアが性機能の分業をせず雌雄同体になり、最高の適応度には到達できない。[2] 他の2つの力学では、プレイヤーが相手の挙動を見て可塑的に適応的表現型を自らとれる。すると最大適応度が必ず進化することが一般的に証明できる。これはゲノムの進化だけでは到達できない適応が、表現型可塑性によって進化できることを示す新しい結果である。


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