| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-17 (Oral presentation)

亜熱帯シイ林における外生菌根菌群集の時間変動とその要因

*松岡俊将(京大・生態研セ),川口恵里(京大・医),大園享司(京大・生態研セ)

外生菌根菌は,ブナ科など森林で優占的な樹木の根に感染し,宿主植物と相利共生的な養分交換を行う真菌類の機能群である.外生菌根菌の群集組成は,土壌環境や気候などのニッチプロセスと,分散制限や個体の生死などによる中立プロセスの両者が影響し,時空間で変化することが知られる.しかし,群集の時間変動について,複数年にまたがった群集の変動パターンを調査した例は少なく,時間変動を生み出す要因としてのニッチと中立プロセスの相対寄与率はほとんど分かっていない.

本研究では外生菌根菌群集の時間変動を調査し,その要因としてニッチ(土壌環境・気候)と中立プロセス(時空間性)の相対寄与率を解明することを目的とした.沖縄県本島北部のスダジイの優占する林分にプロット(10m×50m)を設置し,2009年7月から3カ月おきに2年間計8回,菌根を含む土壌ブロックを採集した.各土壌ブロックから菌根を選び出し,454パイロシーケンサーを用いたメタゲノミクスにより菌類のバーコーディング領域(rDNAのITS)の塩基配列を決定し,分子同定を行った.

2年間で合計123操作的分類群(OTU)の外生菌根菌が検出された.調査時期によってOTU数に有意な違いは見られなかった.調査時期間でのOTU組成の非類似度は時間に伴い増加したが,環境・気候との有意な相関は見られなかった.OTU組成の時空間変動における環境・気候と空間性・時間性の寄与率をdb-RDAに基づくvariation partitioningにより推定したところ,環境・気候・空間・時間はそれぞれ1.7,1.7,4.3,3.7%(合計11.5%)を説明した.これは,調査地における外生菌根菌群集は,季節や年に依らず時間の経過に伴い変化し続けること,群集の時空間変動にはニッチよりも中立プロセスの寄与が大きいことを示唆している.


日本生態学会