| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-18 (Oral presentation)

熱帯雨林の多様な消費者のデトライタスに依存している:放射性炭素分析による解明

*兵藤不二夫(岡大・異分野コア),松本崇(京大院,人環),竹松葉子(山口大・農),市岡孝朗(京大院,人環)

枯死有機物(デトライタス)からジェネラリスト捕食者に流れるエネルギーと物質は,食物網の動態に大きな影響を与えると考えられている。しかし,陸上の食物網において,これら捕食者がどれほど普遍的にデトライタス食の消費者(腐食者)を利用しているかほとんどわかっていない。そこで,我々は熱帯雨林の複数の栄養段階に属する無脊椎・脊椎動物を対象に放射性炭素分析を行い,その食物年齢を求めた。ここで,食物年齢とは一次生産と消費者による利用の間の時間の遅れのことを意味している。消費者の食物年齢は0年から50年以上の幅を持ち,既知の食性に良く対応していた。ミツバチやチョウ,花蜜食者などの植食者は若い食物年齢を持っていた(0-3年)。一方,シロアリのような腐食者は6年から20年以上の古い食物年齢を持っていた。クモや軍隊アリ,ツパイ,昆虫食コウモリなどの捕食者はそれらの中間の食物年齢(2-8年)を示した。野外での観察からこれら捕食者の食物は分解者や植食者を含むことが知られている。従って,捕食者が示す中間の食物年齢は,生食食物網と腐植食物網の結びつきを表していると考えられる。また,先行研究では軍隊アリと土壌食シロアリの窒素同位体比に違いはなかったが,食物年齢は両者の間で有意に異なっていた。今回の結果は,放射性炭素分析が陸上食物網の構造を解明する上で有効な手法であることを示している。


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