| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-19 (Oral presentation)

沖縄県石垣島のマングローブ汽水域における底生動物の群集構造と資源利用

鈴木葉津海*,今孝悦(筑波大生命),山田秀秋(水研セ東北水研)

マングローブ汽水域は地球上で最も高い生産性を誇る生態系のひとつとされる。それを支える低次食物網構造はマイクロハビタット間で異なる食物連鎖経路を辿り、樹木が存在する林内ではマングローブ由来のデトリタスが、樹木を欠く前干潟では微細藻類が主要な基盤になると考えられている。しかし、このような食物網に関する研究の大半は、マングローブ分布の中心である熱帯域で行なわれたものであり、異なる気候帯での知見は僅少に留まる。本研究では、マイクロハビタット間で低次食物網構造が異なるという熱帯域での知見が、亜熱帯性マングローブ汽水域にもあてはまるのか否か検証することを目的とした。

調査地は沖縄県石垣島の3つのマングローブ汽水域(名蔵、吹通、宮良)とした。各調査地で林内及び前干潟の2つのマイクロハビタットを選定し、季節ごと(2013年10月、2014年1月、4月、7月)に環境要因とそこに生息する底生動物の群集構造、さらに、底生動物の食物源を求め、マイクロハビタット間で比較した。

その結果、環境要因にマイクロハビタット間で明瞭な違いは認められず、林内であっても前干潟と類似した環境を成していた。また、群集構造もマイクロハビタット間での差異は小さく、林内にも前干潟に特徴的な種が出現していた。さらに、底生動物は両マイクロハビタットで底生微細藻類を主要な食物源とする傾向にあり、生食連鎖主体の比較的単調な低次食物網構造を形成することが示された。これは、マイクロハビタット間で明瞭な相違が認められる熱帯域の事例とは異なり、熱帯域での知見を一般化することは不適切であり、様々な気候帯での知見の蓄積が重要であることを示唆する。


日本生態学会