| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K2-28 (Oral presentation)

オスの存在が集団増殖率を下げる行動メカニズム

*鶴井香織(沖縄防セ/琉球産経/琉大), 大石毅(沖縄防セ), 熊野了州(沖縄防セ/琉球産経/琉大),照屋清仁(沖縄防セ), 豊里哲也(沖縄防セ/琉球産経)

オスの存在は性的対立を生じさせ、メスの適応度低下を通じて集団増殖率を低下させると予測される。例えば、集団の性比がオスに偏るとメスの生存と産卵に著しい悪影響が出ることがイモゾウムシで報告されている。しかし、性的対立により生じる個体間の相互作用が集団の増殖率に与える影響を一貫して説明した例は少ない。本研究ではイモゾウムシのオスの存在がメスの行動と集団増殖率に与える影響を調査した。性比が1:1の時の雌雄の行動を観察すると、メスがオスよりも有意に餌かつ産卵基質であるサツマイモ塊根から離れているというsexual segregation(雌雄の空間的分離)が起こっていた。しかし、雌雄別に飼育し、雌雄の相互作用を取り除くと、メスはオスより有意にイモ上に留まった。さらに、性比がオスに偏るほどメスあたりの次世代数は減少し、オスの存在が集団の増殖率を低下させるという予測と合致した。イモゾウムシのオスは求愛のため激しくメスにマウントする一方で、交尾はメスが受け入れ姿勢をとらない限り成立しない。イモゾウムシのメスにとって性的対立の主要なコストは、交尾自体よりもハラスメントにより生じていることが予想され、sexual segregationは、メスがセクハラ回避のために食草から離れる行動によるものと推測される。sexual segregationとメスの適応度コストの因果関係についてはさらなる研究が必要だが、sexual segregationはメスの摂食や産卵の機会を減少させている可能性がある。


日本生態学会