| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-008 (Poster presentation)

播種工と自然配植による植栽工が20年間で形成する群落構造及び光環境の違い

*嶌田知帆,長島啓子,田中和博(京府大院)

近年,生態系保全・景観保全・防災を始めとした多面性が緑化に求められている。本研究では遷移段階の異なる高木性樹種・低木性樹種を不規則な配置となるように混植する通称自然配植による植栽工が階層構造を発達させ,周辺の自然植生と同等の群落を再生させるのに有効であると考え,播種工との比較研究を行った。

本研究対象地は標高約1300mに位置する岐阜県高山市あかんだ駐車場道路法面において,約20年前に自然配植による植栽工が行われた法面(以下,自然配植法面)と播種工が行われた法面(以下,播種工法面)である。自然配植法面にはイチイ,シラカンバ,ダケカンバ,タニウツギ,ナナカマド,ミズナラが,播種工法面にはイタチハギ,カヤ,メドハギ,ヤマハンノキが導入された。両法面に10×10mのプロットを4~5個設け,その中で樹高0.5m以上の木本を対象に毎木調査を行い,立木位置,樹高階別本数分布を求め,樹冠投影図を作成した。また,各プロットを5×5mに分割し,その中の中点において0.5mと2.5mの高さで全天空写真を撮影し,散乱光の透過率を求めた。また,草本の被覆率及び実生の個体数を計上した。

自然配植法面は,上層にシラカンバやダケカンバの先駆種及びミズナラが優占し,中・下層にはナナカマド,イチイ,タニウツギなどが分布し,植栽木を中心とした階層構造が形成されていた。それに対し,播種工法面はヤマハンノキによる一斉林が形成されていた。散乱光の透過率の平均値から,播種工法面の方が自然配植法面より約2倍明るく,草本の被覆率も高かったが,実生の個体数密度は約1/40であった。両法面の林床に大きな違いをもたらしたのは,階層構造の有無によって生じた光環境の影響が考えられ,今後水平方向と鉛直方向での光環境の測点を増やし,検証を進める必要がある。


日本生態学会