| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-017 (Poster presentation)

表土が失われる土壌撹乱はウダイカンバの初期定着を妨げるか?

*山崎遥(北大院・環境科学),吉田俊也(北大・北方生物圏FSC)

北海道に自生する広葉樹の中で最も高い経済価値を持つウダイカンバは、埋土種子バンクを形成することが知られている。従来北海道で広く行われてきた天然更新補助作業(重機を用いた掻き起こし)は、表層土壌の大部分を植生とともに剥ぎ取るため、そのような埋土種子の利用可能性を減少させている可能性があった。しかし、一方で、表層土壌を残すことによる土壌養分状態の改善は、他の競争植物種の成長を促進し、ウダイカンバの生育に負の効果をもたらす可能性も考えられる。そこで本研究では、表層土壌を多く残す処理が、ウダイカンバの初期定着(本数、成長、生残率)に有利となるかを明らかにすることを目的とした。北海道大学天塩研究林内で、小面積皆伐後、通常の掻き起しおよび、掻き起こした表層土壌を再度施工地に敷き戻す施工(表土戻し)を実施した。4年生時点でのウダイカンバの本数密度は、処理間で有意な差が認められなかった。平均樹高は表土戻しの箇所で有意に大きかったが、ウダイカンバ以外の植生量ではより顕著な差が見られた。4-5生育期間におけるウダイカンバの生存率は処理間で差が見られなかったが、自身のサイズ(期首の樹高)の正の効果、および周囲の植生量からの負の効果が認められた。これらの影響は、平均樹高を持つ個体では後者(周囲の植生による負の効果)の方が大きいと考えられたが、一方で、表土戻し地では、すでに樹高が十分高く植生量の負の効果を受けないと見積もられる個体数が数倍程度多く生育していた。表土を残す施工は、ウダイカンバの更新にとって常に有利とは限らず、樹高成長速度や他の植生の繁茂によっては効果的ではない場合が起こりうることがわかった。


日本生態学会