| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-024 (Poster presentation)

天然林‐人工林エコトーンにおける植生変化

*土居優,松川尚平,石井弘明,黒田慶子

天然林および人工林の群落構造に関する研究は多いが、両者の境界域における植生の相互作用に関する研究例はまだ少ない。本研究では、兵庫県の60年生ヒノキ人工林(以下:ヒノキ林)と隣接する天然性二次林(以下:二次林)の境界域における林分構造を調べ、ヒノキ人工林内への広葉樹の侵入過程について境界からの距離を軸に検証した。調査地の篠山市真南条上は斜面にスギ、ヒノキが植林され、尾根部や農耕地との境界に二次林が見られる典型的な里山景観である。本調査地では尾根部や林縁から広葉樹が針葉樹人工林に侵入していることが確認されている。ヒノキ林と二次林の境界付近に10×30mの調査区を設置し、樹高1.3m以上のすべての木本個体の種名、胸高直径(DBH)、樹高、立木位置を測定した。更に林分構造、遷移の進行を把握するため、調査区内の下層植生調査(樹高1.3m未満)と光環境(高さ1.3m)測定した。調査区を二次林に近い方から二次林区(0~10m)、中間区(10~20m)、ヒノキ林区(20~30m)とし、それぞれの区間でのBA(㎡/ha)、本数密度(本/ha)を計算した。

調査区内の構成樹種は常緑樹がほとんどで ヒノキを除くとヒサカキ、ネズミモチ、アラカシの個体数が最も多かった。二次林からヒノキ林に向かって、木本の種数、BA、個体数が著しく減少し、これらに占める落葉樹 の割合が減少した。一方、調査区の開空度は全体的に低かったが、二次林からヒノキ林にかけて多少増加傾向があり、これに伴い下層植生が増加した。管理放棄された人工林の下層に広葉樹が侵入した例は見られるが、本研究の結果からその空間過程 が明らかになった。成熟した人工林への広葉樹の侵入は表土浸食物防止に寄与する と考えられるが、管理放棄林では高木種の侵入によって植栽木の成長が妨げられないようにする必要がある。


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