| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-048 (Poster presentation)

着生位置が異なる2タイプの開放花をつけるイブキスミレの繁殖戦略

*篠原 義典(北大・院・環境科学), 山岸 洋貴(弘前大学・白神), 速水 将人(北大・院・環境科学), 大原 雅(北大・院・環境科学)

スミレ属植物は、花の着生様式が花を根元から根生する種と、茎から腋生する種に大別される。スミレ属植物は、花弁を持ち開花・結実する「開放花」と、つぼみのまま結実する「閉鎖花」の形態と機能の異なる2タイプの花を生産するが、個体内での花の着生位置は通常変化しない。しかし、イブキスミレはスミレ属植物のなかでも例外的に、根生する開放花と腋生する閉鎖花の2タイプの花を介した種子繁殖を行っている。さらに北海道のイブキスミレ集団においては、腋生する開放花の存在も報告されている。つまり、種内で着生位置の異なる2タイプの開放花(根生、腋生)を生産することが明らかになっている。このようにイブキスミレはスミレ属植物の中でも特殊な特徴をもち、さらに北海道集団では開放花2タイプと閉鎖花の計3タイプの花を生産するため、他のスミレ属植物とは異なった繁殖戦略を持つことが予想される。そこで本研究では、着生位置が異なる2タイプの開放花をつける北海道のイブキスミレ集団に着目し、各タイプの花の結果率・結実率、生産時期、花形態に関する調査を行った。

その結果、2タイプの開放花の間で結果率・結実率に差はなかったが、それぞれの花の生産時期と花形態は異なっていた。根生開放花は腋生の花よりも大型で他のスミレ属植物の開放花と同様、閉鎖花が生産される前に生産されていた。一方、腋生開放花は他のスミレ属植物の開放花とは異なり、閉鎖花と同時期に生産された。これらの結果から、イブキスミレにおいて着生位置の異なる2タイプの開放花はそれぞれ異なる役割を持ち、さらに腋生開放花は他のスミレ属植物の開放花とも異なる役割を持つことが示唆された。


日本生態学会