| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-061 (Poster presentation)

モクセイ科における祖先的なニ対立遺伝子型自家不和合性と異花柱性への進化

*平野友幹(京大・生態研), Shixiao Luo(South Chaina Botanical Garden), 川北篤(京大・生態研)

被子植物は現在で約27万種を数える大きな分類群であり、他の生物群には見られない多様な交配様式を有している。様々な被子植物の系統で収斂的に進化した交配様式の一つが異花柱性であり、現在までに28を超える被子植物の科で見つかっている。異花柱性とは、雄蕊が長く、雌蕊が短い短花柱花のみをつける個体と、雄蕊が短く、雌蕊が長い長花柱花のみをつける個体が集団中に半数ずつ二型として存在する交配様式である。さらに、多くの異花柱性植物は花の二型と合わせて短花柱花同士、あるいは長花柱花同士ではたとえ他個体同士であっても交配が不可能である同型内不和合と呼ばれる性質を併せ持っており、これは自己・非自己の認識に関わるS対立遺伝子が集団中に二つのみ存在する自家不和合性システム(二対立遺伝子型自家不和合性)である。異花柱性についてはダーウィンがサクラソウで発見してから現在までにその生態学的意義について研究が進められてきた。しかし、集団中の半数の個体としか交配できないという大きな繁殖の制約を受けるこの交配様式が、なぜ被子植物の中で何度も独立に進化しているのか、またどのようにして生じたのかはまだ明らかになっていない。

そこで我々は異花柱性や、珍しい性表現である雄性両全性異株性が繰り返し生じているモクセイ科を対象として受粉実験を行ったところ、花に多型の無い両性花のみをつける種においても二対立遺伝子型自家不和合性を持つことが示唆された。これは花に多型の無い両性花において二対立遺伝子型自家不和合性の存在を示唆する初めての例である。モクセイ科では、共通祖先の段階で二対立遺伝子型自家不和合性が既に獲得されており、その後に花の二型が一部の属で二次的に生じたことにより、現在見られるような異花柱性が成立した可能性がある。


日本生態学会