| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-068 (Poster presentation)

ミズナラとダケカンバに対する野外模擬温暖化実験 -葉の生理・形態的特徴の季節変化と気温の関係-

*長尾彩加(岐阜大・院・応用生物),大橋千遼(岐阜大・応用生物),村岡裕由(岐阜大・流域圏センター)

近年、地球温暖化と関連して、落葉広葉樹の成長開始時期の早期化や落葉の遅延、着葉期間の延長などが報告されている。落葉広葉樹の生理生態学的活動の季節変化は、炭素循環や窒素循環などの森林生態系機能と密接に関わっている。そのため、温暖化に対する森林生態系の生理生態学的プロセスの応答を様々な植生機能タイプや樹種について解明することが生態系研究で求められている。本研究では、温度環境の違いが冷温帯落葉広葉樹の光合成生産力の季節変化に及ぼしうる影響を生理・形態的特徴に着目して解明することを目的とし、2種の林冠木を対象に野外模擬温暖化実験を行った。

本調査は2013年から2014年にかけて岐阜大学高山試験地(岐阜県高山市)の冷温帯落葉広葉樹林で行った。対象樹種は林冠層を優占するミズナラ(Quercus crispula)とダケカンバ(Betula ermanii)である。林冠観測タワー上に開放型温室を設置し、日中は約2℃高い気温を維持した。季節を通して定点カメラによる葉群フェノロジーのモニタリング、SPADによるクロロフィル含量の計測、LMA(Leaf Mass per Area)と窒素含量の計測を行った。

温室環境は開葉期を2日ほど早め、落葉期を5日ほど遅らせた。着葉期間はミズナラでは7日間、ダケカンバでは5日間延びた。クロロフィル含量や光合成能はミズナラでは温暖化区の方が1~1.5割程度高い傾向を維持したが、ダケカンバでは差が無かった。LMAは両種ともに差が無かった。本発表では、温度環境の違いが個葉生理生態と葉群量の季節変化にもたらした影響に基づいて、樹種間の温度応答性の違いについて考察する。


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