| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-082 (Poster presentation)

Adaptive differentiation of physiological traits mediated with divergent selection between coastal and inland populations of Lathyrus jaonicus

*大槻達郎 (京大・院・人環), 森泉(岡山大・植物研), 且原真木 (岡山大・植物研), 瀬戸口浩彰 (京大・院・人環)

局所適応は生態的分化をもたらす要因である。植物は固着性であるため、異環境への適応には生理的特性の変化が伴う。したがって、植物における局所適応に関与する環境要因と生理的特性の特定は、生態的分化の解明につながる。ハマエンドウ(マメ科)は海浜のみならず、琵琶湖の湖岸等にも隔離分布する海浜植物である。そのため、淡水域に生育する集団(淡水集団)は、土壌や塩分環境の異なる生育地に適応していると考えられた。本研究では、相互移植と生存・成長解析を行うことで、淡水集団と海浜集団の適応に関与する環境要因と表現型の解明を目的とした。相互移植実験の結果、両集団の移植個体は、本来の自生地よりも花数が減少した。また、淡水集団の海浜移植個体では、生存率も低下した。さらに、塩・乾燥ストレスを組み合わせた生存実験では、淡水個体の致死日数は有意に早くなった。淡水域と海浜の土壌を用いた比較成長解析を行った結果、淡水土壌では、海浜集団の個体は自生地個体と比べ、成長量が有意に減少した。さらに、海浜個体に感染している根粒菌の形状は、淡水個体とは異なるものが多かった。マメ科植物の窒素源である根粒菌は、宿主植物が異なると宿主の成長に影響を与える。そのため、湖岸土壌中の根粒菌は、淡水域に移植した海浜集団の花数や成長量の減少に関与することが示唆された。以上を総合すると、淡水域に生育するハマエンドウは局所適応しており、海浜から隔離されている間に、淡水域の土壌環境に適した生理的特性を獲得したと考えられた。


日本生態学会