| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-088 (Poster presentation)

斜面におけるモウソウチク地下茎の分布拡大シミュレーション

*稲田淑花(兵庫県大・環境),中桐斉之(兵庫県大・環境)

近年、日本各地で適切な管理がされてきた竹林が放棄され、周辺二次林や耕作地へと侵入している事例が報告されている。放置竹林の拡大によって地すべりなどの土砂災害や、生物多様性が乏しくなることが危惧されており、早急な竹林拡大防止策の検討が求められている。

竹林拡大を予測し効率的に管理を行っていくには竹林の拡大条件の解明が必要であるが、先行研究では竹林拡大と斜面傾斜の関係について明確な結論が得られていない。竹林は地下に伸びる地下茎による無性生殖で分布拡大を行っており、地下茎の生活空間の広さが表土層の厚さに依存するという報告がある(沼田、三寺、小川, 1957)。また、土層が薄く保水力に乏しい傾向にある地域では竹林の拡大速度が遅いといった報告もある(鳥居、井鷺, 1997)。これより、斜面傾斜が大きくなると土壌の保水力が小さくなり、地下茎の成長が抑えられ、竹林の拡大に影響を及ぼしている可能性が考えられる。

そこで、本研究では土壌が含む水に依存して成長を行う地下茎成長モデルを作成した。このモデルは設定した傾斜角度によって表土葬の厚さや土壌水の中間流出量が変化する。モデルによるシミュレーションの結果、傾斜が急になるにつれて地下茎の成長が抑制されることが分かった。これは、傾斜が急であると保水力のある表土層が少なくなるために起こると考えられる。

発表では、シミュレーション実験の解析結果と竹林と斜面の関係について詳しく解説する。


日本生態学会