| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-116 (Poster presentation)

カエデ属を利用するハマキホソガ属の寄主利用様式の進化

*中臺亮介, 川北篤(京大・生態研)

植食性昆虫は地球上で記載されている生物種数の三分の一以上を構成する。この他に類を見ない多様性は、植食性昆虫の進化において繰り返される食性(寄主植物利用様式)の変化に起因すると考えられている。食性の変化は、異なる寄主植物を利用する個体の間に生殖隔離をもたらすことで種分化を促進する可能性がある。しかしながら、近年では食性の変化を伴わずに多様化が進行した例も発表されており、食性の変化が植食性昆虫の種分化や多様化において真に重要であるかの検証は未だ不十分である。さらに、多くの先行研究では、系統樹上での解析のしやすさから、食性を植物の科レベルで評価して研究が進められてきたが、同じ科や属の植物を利用する近縁な植食性昆虫種間における食性の変化と種分化の関係についてほとんど考慮されていない。

本研究では、カエデ属植物を利用するハマキホソガ属を対象として、食性の変化がどれほど種分化過程において重要であったかを明らかにすることを目的として研究を行った。日本産カエデ属植物16種からハマキホソガ属ガ類を採集し、形態およびミトコンドリアCOⅠ遺伝子を用いて種を識別したところ、既知種10種を含む12種が得られた。カエデ属を利用する以外の種も含むハマキホソガ属全体の系統解析を行ったところ、カエデ属を利用する12種は全て互いに近縁であり、主にカエデ属植物上で多様化を遂げたことが分かった。本発表ではカエデ属を利用するハマキホソガ属の系統関係と寄主植物についての情報を用いて行った、食性の変化と種分化の関係についての解析結果を報告する。


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