| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-122 (Poster presentation)

ポリネ―ターの獲得を巡る植物種間の競争関係は、報酬を持たない第3の植物種の存在によってどう変わるのか?:人工花とマルハナバチを用いた閉鎖系実験

*辻本翔平,徳江誠,石井博(富大・理)

生物種間の競争関係に影響する要因を特定することは、群集の動態や安定性の評価に欠かせない。本研究では、ポリネーターの獲得を巡る2種植物間の競争関係の優劣に、報酬を持たない第3者の存在がどう影響を与えるのか、人工花とクロマルハナバチを用いた閉鎖系実験で検証した。

実験は、2種類の報酬あり人工花(青色と黄色)が存在する採餌場(①)、2種類の報酬あり人工花(青色と黄色)と1種類の報酬なし人工花(水色または藍色)が存在する採餌場(②)、青色の報酬あり人工花と1種類の報酬なし人工花(水色または藍色)が存在する採餌場(③)で行った。これらの採餌場にハチを一匹ずつ1600回訪花させ、各花への訪花頻度を比較した。なお、実験で用いた人工花の内、報酬あり人工花では30%(w/w)ショ糖溶液が、報酬なし人工花では蒸留水が分泌される仕組みになっている。無報酬花に用いた青系統色間では、水色の方が藍色と比べ、青色とのコントラストが小さい(膜翅目の色覚モデルChittka1992に基づく)。

実験の結果、2種類の報酬花(青花と黄花)が存在する採餌場(①)では、どちらの報酬花も同程度に訪花されていた。しかし、無報酬花を加えた採餌場(②)では、無報酬花の色が水色であっても藍色であっても、青花にくらべて黄花の訪花頻度が高かった。また、青色と無報酬花のどちらかの色とを組み合わせた実験(③)では、どちらの無報酬花の時でも色の学習とともに青色報酬花を正しく選択するようになった(正答率は青色vs水色で約70%、青色vs藍色で約90%)。

これらの結果は、無報酬色の色を視覚的に区別する事が出来る状況であっても、無報酬花の存在が、報酬花間で見られたポリネーターの獲得を巡る競争関係の優劣に影響をあたえる事を示唆している。


日本生態学会