| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-140 (Poster presentation)

アカネズミの行動圏の親子間空間配置と貯食堅果の行方

*大石圭太(鹿大院・連農),河邊弘太郎(鹿大・自セ),田浦悟(鹿大・自セ),畑邦彦(鹿大・農),曽根晃一(鹿大・農)

日本の森林に広く分布するアカネズミは、秋から冬にかけて、重要な餌資源としてブナ科樹種の堅果を利用する。また、アカネズミは貯食行動を通して種子散布者として機能し、ブナ科樹木の分布拡大・天然更新に寄与する。近年、森林・林業基本計画により、育成単層林から天然更新による針広混交の育成複層林への誘導が推進されており、この誘導に対するアカネズミの貢献が期待される。鹿児島県では、アカネズミの繁殖期の前半が堅果落下時期と一致するため、主要な貯食者は親世代と考えられる。貯食された堅果の回収は、貯食者以外の盗難者よりも貯食者自身による回収率の方が高いが、盗難された場合、貯食者の行動圏外へ堅果が持ち出され、運搬距離が長くなることが期待される。そのため、堅果分散や貯食後の回収率は個体間の行動圏の空間配置に著しく影響され、この空間配置は子が親から独立した後の親子間の行動圏配置が重要な決定要因であると考えられる。

そこで今回、2011年4月~2013年6月の標識再捕調査の際にサンプリングしたアカネズミ170個体について、8座のマイクロサテライトマーカー(Azuma et al. 2013)を用いて、親子関係を解析した。その結果、170個体のうち83個体、延べ72組の個体間で親子関係が認められた。母子の関係については、それらの捕獲履歴から9個体の母親とそれぞれ1~3個体の子を確認した。これらのうち4個体の母親は元の行動圏に留まり、5個体は移動した。後者の5例については、母親が貯食した堅果の貯食者がいなくなるため、放置・盗難の可能性が高まると考えられる。大会では父親も含めた親子間の行動圏配置についても解析結果を報告する。


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