| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-167 (Poster presentation)

ヒゲブトハネカクシ亜科内における好白蟻性と特異な収斂形態の多数回進化(甲虫目:ハネカクシ科)

*金尾 太輔 (九州大・生資環・昆虫), 丸山宗利 (九州大・博)

生活史の少なくとも一部をシロアリ社会に依存する好白蟻性昆虫は、特に甲虫目ハネカクシ科ヒゲブトハネカクシ亜科において種や形態の著しい多様性を示す。現在、亜科内58族のうち、実に17族より650種以上の好白蟻性種が知られており、その中の12族は好白蟻性種のみで構成されている。これらの分類群では、腹部の膜質部が大きく肥大した種(腹部肥大型)や、前胸背板が大きく伸長しカブトガニのように扁平な体形をもつ種(カブトガニ型)などの特殊な形態が知られている。しかし、このような特殊な形態の発達は他の分類群との比較を困難にし、形態情報から系統的位置を推定する上で障害となる。実際に、亜科内で系統学的知見が得られている好白蟻性分類群はほとんどない。本研究では、DNA情報を用いてヒゲブトハネカクシ亜科内における好白蟻性分類群の系統的位置を調査した。系統解析では、8族より32種の好白蟻性種、およびその他の10族より29種を対象として、5つの遺伝領域を用いた。解析の結果、好白蟻性8族のうち、実に6族において、非単系統性や所属変更の必要性が示された。たとえば、Lomechusini族に属するTermitozyrina亜族には、異なる3つの系統に属する種が含まれていた。Corotocini族およびTermitonannini族は、自由生活性Oxypodini族の一部であった。これらの結果は、ヒゲブトハネカクシ亜科の分類体系の大幅な改変の必要性を提示する顕著な成果である。また本研究により、ヒゲブトハネカクシ亜科内における好白蟻性の多数回進化や、腹部肥大型やカブトガニ型という特殊な形態の収斂進化が系統学的根拠にもとづき初めて示された。


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