| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-192 (Poster presentation)

放牧シバ草原における温暖化操作実験 ―長期的昇温による炭素動態の経年変化の解析―

*墨野倉 伸彦,田波 健太,鈴木 真祐子(早稲田大・院・先進理工),吉竹 晋平(岐阜大・流圏セ),小泉 博(早稲田大・教育)

近年進行している大気中CO2濃度の上昇により、世界的な平均気温の上昇や降水量の増加といった様々な気候変動が予測されている。そのような気候変動は、生態系の炭素循環に大きな影響を与えると同時に、炭素循環自体も大気中のCO2濃度への影響を通じて気候変動に影響を与えることが知られている。このことから、様々な生態系において気候変動の影響を調べる研究が行われてきた。中でも草原生態系は全陸域面積の約4割を占める重要な生態系であり、炭素が地下部に偏って蓄積されるという特徴から、気候変動の影響で有機物の分解が急速に進む可能性が指摘されている。したがって、草原生態系を温暖化することでその生態系応答を調べる研究は重要であるが、同一の生態系を5年以上の長期に渡り継続して温暖化した研究は少ない。本研究では、放牧シバ草原において温暖化操作実験を行い、気温上昇に対する炭素収支の応答を6年間にわたって解析した。

草原の地上1.2 mに赤外線ヒーターを設置した温暖化区を設定し、生態系全体を2℃昇温させ、炭素収支として生態系純生産量と生態系呼吸量の測定を行い、また生態系総生産量も算出した。さらに、地下2 cmの土壌温度と土壌水分、気温、光量子束密度などの環境要因の測定も行った。

その結果、全ての年を通じて温暖化区では土壌温度は増加し、土壌水分量は減少した。生態系呼吸量は全年で明確な季節変動を示し、全体としては生態系呼吸量と生態系総生産量の両方が昇温操作によって増大する傾向を示したが、夏季の生態系呼吸量が減少する年もみられた。さらに、本発表では生態系純生産量および生態系呼吸量を中心とする炭素収支の動向と、それに影響を及ぼす環境要因についても議論する。


日本生態学会