| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-198 (Poster presentation)

日本列島における森林生態系の土壌窒素・リンの形態と濃度

源六孝典*,小野田雄介,丹羽慈,北山兼弘

日本の森林生態系の一次生産速度はWI(温量指数)によって決定される、とされてきた。しかし、窒素やリンなどの必須元素が多くの生態系において植物の生長を律速していると言われており、これら元素の多寡が日本の森林生態系の一次生産に何らかの影響を及ぼしている可能性がある。そこで本研究では、北海道から沖縄にわたる環境省モニタリングサイト1000の森林プロットを利用させていただき、自然林生態系の地上部純一次生産に土壌栄養塩が及ぼす影響を検討した。

土壌窒素については、アンモニア態・硝酸態の無機態窒素濃度を測定した。またリンについては、風乾土壌を異なる溶液で連続抽出することにより4つの画分(一次鉱物中に含まれるリン・非吸蔵態リン・有機態リン・吸蔵態リン)に分けて測定した。地上部純一次生産速度は、公開されている毎木・落葉落枝調査データから、単位面積当たりの木部生長速度・リター生産速度を求め、その合計値から算出した。

地上部純一次生産速度を従属変数に、WIと各栄養塩濃度を独立変数にとり重回帰分析を行ったところ、WI単独と比べ、栄養塩濃度を組み込むことにより説明力が大きく上昇した。また赤池の情報量基準を指標としてモデル選択を行ったところ、WIと一次鉱物リン、非吸蔵態リン、有機態リンが独立変数として選択された。

また、地上部純一次生産を木部成長とリター生産に分けて解析を行ったところ、同じ温度条件にある森林においては栄養塩現存量の少ない森林ほど木部成長速度が大きく、リター生産速度が小さいことが分かり、土壌栄養が器官間の分配に影響していることが示唆された。

以上の結果から、日本の森林生態系において土壌栄養塩濃度が森林の一次生産や森林構造に影響を与えていることが示唆された。


日本生態学会