| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-024 (Poster presentation)

湧水湿地におけるモウセンゴケとトウカイコモウセンゴケの共存機構

三浦祐紀,*肥後睦輝(岐阜大・地域)

東海地方には小面積ながら多様な湿地植生が形成される湧水湿地が分布する。湧水湿地における多種共存の機構を明らかにするために、本研究では分布様式、分布と環境因子の関係にもとづいて近縁2種の共存機構について検討することを目的として調査を行った。

材料としたのは、湧水湿地に生育するモウセンゴケ科植物のモウセンゴケ(Drosera rotundifolia)とトウカイコモウセンゴケ(Drosera tokaiensis)である。調査は岐阜県土岐市の北部に位置している北畑池湿地で、2011年、2012年に長さそれぞれ20m、10m、25m、15m、10mで、幅30㎝の帯状調査区を設置して行った。帯状調査区の30㎝×30㎝の小方形区ごとにモウセンゴケ、トウカイコモウセンゴケの個体数、植被率、地形、基質の種類、水位、比高、光量子束密度を記録した。

調査区におけるモウセンゴケとトウカイコモウセンゴケの個体密度の間には負の相関が認められ、湿地内で2種が排他的に分布することが明らかになった。地形的には、モウセンゴケが湿地内の凹地に、トウカイコモウセンゴケは湿地内の凸地上の平坦地や斜面に分布する傾向があった。モウセンゴケは水位が高い小方形区ほど個体密度が増加し、トウカイコモウセンゴケは水位が高い小方形区ほど個体密度が減少していた。またモウセンゴケ、トウカイコモウセンゴケは、それぞれは水位0cm以上の小方形区、水位0cm未満の小方形区に偏って出現していることも明らかになった。モウセンゴケは相対光量子束密度60%以上で、トウカイコモウセンゴケは相対光量子束密度60%未満で個体密度が高い傾向があった。

以上の結果から、湿地性植物であるモウセンゴケとトウカイコモウセンゴケは水位の異なる立地に生育する、つまり立地分割により小面積の湧水湿地で共存していると結論した。


日本生態学会