| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-031 (Poster presentation)

四国における最終氷期以降の温帯性針葉樹の変遷

三宅 尚(高知大・理)

四国地方においてこれまでに得られた花粉化石記録に基づき,最終氷期以降の温帯性針葉樹の変遷について議論する.最終氷期初頭(9万年前前後)には,四国山地の低標高域にある黒沢湿原(560m)でスギ属とコウヤマキ属が優勢な花粉記録が得られている.最終亜間氷期と最終氷期最盛期には,低地~山地の低標高域の分析地点で,ツガ属,モミ属,マツ属単維管束亜属,スギ属,コウヤマキ属,ヒノキ科などの針葉樹花粉と,クマシデ属,コナラ属コナラ亜属,カバノキ属,ブナ型などの落葉広葉樹花粉が多産する.特に沿岸低地の地点では,最盛期においても,落葉広葉樹花粉が高木花粉の過半を占める.コナラ属アカガシ亜属,シイ属,ヤマモモ属などの常緑広葉樹花粉の増加開始期は,沿岸低地の地点で1.2万~9千年前,1,000mを超える山地の高標高域の地点でも約8千年前である.低地~山地の低標高域の地点では,後氷期初頭以降,ツガ属,モミ属を主とする針葉樹花粉も比較的高率で連続出現する.四国山地野鹿池湿地(1,220m)では,後氷期初頭にはヒノキ科を除き,針葉樹花粉の産出は稀で,後氷期中頃以降に増加する.このように,四国では最終氷期初期には少なくとも山地の低標高域でスギとコウヤマキが優勢な温帯性針葉樹林が成立し,最終亜間氷期と最終氷期最盛期には温帯性の針葉樹と落葉広葉樹を主体とする針広混交林が広く分布していた.後氷期初頭になると常緑広葉樹が急激に分布拡大するが,低地~山地の低標高域では温帯性針葉樹もごく最近まで,常緑広葉樹と混生していた.他方,野鹿池湿地の花粉記録は,四国の中間温帯域に現在,分布する温帯性針広混交林の原型がむしろ,後氷期中頃に成立した可能性を示唆する.この検証のためには,山地の高標高域における花粉記録の蓄積が必要である.


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