| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-046 (Poster presentation)

北海道東部におけるトドマツの成長・材質の変異と地域環境との関連

*石塚航,今博計,来田和人,黒丸亮(道総研・林業試)

北海道の優占樹種トドマツ(モミ属針葉樹)には地域変異が知られ、それぞれの生育環境への遺伝的適応が示唆されている。しかし、評価に時間のかかる材質や長期の成長動態における変異の実態や、変異に関わる環境傾度が何かといった定量的評価は未だ十分ではない。本研究では、北海道東部において35年前に設定されたトドマツ地域差検定林に着目し、植栽後長期間の経過した成長・材質関連形質にどのような遺伝的変異が認められるかを明らかにした。

調査した検定林は厚岸に位置し、地元産(自生集団)を含み全道各地域から選定された計47母樹由来の次代苗が植栽されている。2014年秋に現地調査を行い、成長関連形質として材積(個体サイズ)と母樹別生残率、材質関連形質として材密度、生材含水率を得た。また、母樹の由来林分を台帳から抽出して地理情報(緯経度)を得、検定林からの地理的距離を算出するとともに、最寄りの気象観測所のデータをもとに、母樹の生育地域の環境情報(気温・降水量・日照時間の季節・年平均と積雪深)を取得した。これらのデータセットを用いて統計モデルを構築し、成長・材質に自生集団の有利性が認められるか、また遺伝的変異を説明する地理傾度、環境傾度があるか解析した。

結果、自生集団の有利性は材積と生残において成立したが、密度と含水率では認められなかった。材積は母樹の由来林分が西方向に離れるほど、生残は西方向・北方向に離れるほど悪くなった。また、環境傾度との関連も2成長形質に検出され、冬期日照条件の良い地域産の母樹が良い成績だった。植栽地も冬期日照条件が良く寒害の誘因となることから、寒害への適応に関連した可能性があった。一方、密度にも環境傾度との関連が検出され、晩材形成期にあたる秋期気温が高い地域ほど材密度も高い傾向があった。


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