| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-051 (Poster presentation)

島嶼群で異なるリュウキュウマツの休眠と年輪生長

*飯島友(千葉大・園芸),工藤佳世(農工大・農)

リュウキュウマツ(Pinus luchuensis)は,亜熱帯域に属する南西諸島で唯一のマツ科植物である.その生長輪(年輪)は,温暖・湿潤な環境下で生育するため,偽年輪や不明瞭な生長輪を形成する個体が多く,晩材形成後に明確な休眠期をもたずに形成層活動が活発となり,早材を作り始める現象が確認されている.休眠の有無は,亜熱帯域の樹木の生長輪形成にかかわる重要な条件であり,個体の立地環境や森林の群落構成に関係していることが考えられる.本研究では,リュウキュウマツの生育する異なった3つの島嶼群において,リュウキュウマツの肥大生長を直接通年観測し,休眠の有無と年輪生長のタイミングを検討する.

沖縄本島与那,南大東島,小笠原諸島父島に生育するリュウキュウマツの成木に垂直変位型デンドロメーター(Ecomatik社製 Dendrometer DR型)を設置し(2012年11月~継続中),年間の幹の肥大生長の変化を計測した.各個体の生長の年変化が明らかとなった後に,休眠時期とみなされる生長が緩慢になる時点で形成層部分を採取してプレパラートを作成し,形成層活動の有無を観察した.

リュウキュウマツの幹生長は,島嶼ごとに異なる肥大生長の変化をみせた.与那では休眠期間が冬季にみられたが,南大東島および父島では形成層活動が緩慢になるか休止する期間が冬季に限らず観察された.リュウキュウマツの幹生長は,湿潤な環境(沖縄本島)においては冬季休眠している可能性があるが,乾燥した環境(南大東島,父島)においては,冬季も形成層活動が行われ,降水に反応して肥大していることが示唆された.


日本生態学会