| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-057 (Poster presentation)

葉の生理的特性と形態的特性はCNバランスの変化とどのようにリンクしているのか?

*杉浦 大輔, 別役 恵理子, 渡辺 千尋, 寺島 一郎 (東大・院・理)

個葉の生理的特性 (光合成、水分生理特性)や、形態的特性 (厚さや密度などの解剖学的特性、構成成分) は植物の相対成長速度に大きな影響を与える要因であり、生育条件に応じて適切に調節されていると考えられる。

一般に、葉のCN比が低い (高CO2、低N、強光環境) ほど、葉にデンプンや可溶性の糖 (TNC) が蓄積しやすく、光合成のダウンレギュレーションが起こると言われている。しかし、これらの条件下の葉はN不足に陥るため、TNCの蓄積と光合成のダウンレギュレーションの因果関係は不明瞭な場合が多い。また、TNCの蓄積は貯蔵器官や新葉のシンク活性にも影響を受けることや、TNCの蓄積が葉の構造性成分にも影響を与えることが示唆されている。このように、CNバランスの変化は個葉の形態・生理学的特性に大きな影響を与えるが、それらの因果関係、制御メカニズム、生態学的意義については未解明な点が多い。

本研究では成長特性の異なる品種のダイコンとダイズを用い、接ぎ木や摘葉によるシンクソースバランスの操作、生育CO2・N条件の操作、個葉の光環境操作によって、CNバランスの変化が光合成特性や生理学的特性に与える影響を解析した。

ダイコンの葉では、低シンク活性、高CO2、低N条件ほどTNCが蓄積し、より小さな葉肉細胞が隙間なく敷き詰める密な構造をとるように変化していた。さらに、葉面積あたりの細胞壁量が増加していたことから、細胞壁厚さが増加していたことも示唆された。一方で最大光合成速度とTNCには相関がなく、ダイコンではTNCの蓄積による光合成のダウンレギュレーションは起こりにくいことが示唆された。当日はダイズで観察された結果と合わせて、個葉のCNバランスの変化が葉の生理的・形態学的特性に及ぼす影響の、メカニズムと生態学的意義について議論する。


日本生態学会