| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-082 (Poster presentation)

風媒の雌雄異株植物における開花スケジュールの性的二型性

*松久聖子, 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

雌雄異株植物の開花スケジュールの性的二型性についての研究は、虫媒種が中心であり、風媒種では知られていない。本研究では、開花スケジュールのうち、特に個花の寿命と開花の同調性(花序やシュート単位)に着目する。これらは同時開花数を通じ、送粉者の誘因効果に影響する。そのため虫媒種では、送粉者を介した選択圧により性的二型性が生じ、メスは長い寿命の個花と高い開花の同調性で同時開花数をより多くし、オスは短い寿命の個花と低い同調性で同時開花数を増やしすぎず入れ替えるのが適応的であることが、モチノキ属の研究でわかっている(前報)。そこで本研究では、スイバを対象に風媒種の開花スケジュールの性的二型性を調査し、虫媒種と比較した。風媒種は送粉者を惹きつける必要がないため、個花の寿命と開花の同調性の性的二型性は虫媒種よりも小さく、雌雄が共に虫媒種のオスのような咲かせ方になるのではないかと予測した。

野外調査では、個花の寿命と花序の枝単位での同時開花数を1〜3日おきに記録し、開花の同調性は「同時開花数/生産したつぼみ数」で算出した。その結果、個花の寿命はメスの方が長く、最大同時開花数もメスの方が多かった。メスは開花期間中につぼみが増えたため、正確な開花の同調性は算出できなかったが、少なくとも開花期間の初期に同調性が最も高く、長い寿命の個花を初期に一斉に開花し、その後開花数が減少していた。一方オスは、開花期間を通して、短い寿命の個花をおおよそ一定量で咲かせていた。以上より、予測に反して風媒種の開花スケジュールも虫媒種と同様の性的二型性をもつと考えられる。ただし、今回の調査結果から、メスの開花の同調性のピークが、虫媒種では一山型であるのに対し、風媒種は初期にあることもわかった。風媒種における選択圧の解明は今後の課題である。


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