| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-123 (Poster presentation)

中部山岳地域の高山帯・亜高山帯に点在する池沼の成因と生態学的特性

高岡貞夫(専修大・文)

中部山岳地域の2000m以上の標高域に分布する、面積約50 m2以上の池沼304個の成因を検討した。成因として最も重要なのはマスムーブメントによる地形で202個(66.5%)を占めていた。このうち65個は地すべり移動体内の凹地に、137個は重力変形によって形成された主稜線付近の線状凹地内に存在していた。これらの池沼は地域内の積雪が多い地区で出現頻度が高いが、地質も出現頻度を左右している。マスムーブメント地形に次ぐ重要な地形は火山地形と氷河地形で、それぞれ16.8%と15.8%を占めていた。全体の90%近くの池沼が1000 m2未満であったが、面積のサイズ分布は池沼の成因によって異なっていた。マスムーブメント地形に形成された池沼は、氷河地形や周氷河地形に形成された池沼より、サイズ分布の幅が広く、小型(1000 m2以下)のものだけでなく中型 (1000-6000 m2)のものを含んでいる。火山地形に形成された池沼には大型のものが含まれ、10000 m2を超える池沼も存在する。分布標高や形成年代にも違いがあり、氷河地形にある池沼は高標高域に分布し、後氷期のほぼ同じ時期に形成された可能性があるのに対し、他の地形の池沼は2000m以上の様々な標高に分布し、形成時期も一時期に集中しないと考えられる。

これらの池沼のうち、上高地地区の稜線部に分布する29の池沼(線状凹地23,カール底5,火口1)において、水質、消雪時期、周囲の植生、クロサンショウウオの出現状況の比較を行ったところ、線状凹地に形成された池沼でのみクロサンショウウオ幼生が観察された。池沼の成因によって異なる、pH、水温、消雪時期、周囲の植生の発達具合が、幼生の生息環境にかかわっていると考えられる。また線状凹地の池沼であっても100 m2以下の池沼では幼生の観察されない割合が高まる傾向が認められ、水位の季節的変動が影響していることが示唆される。


日本生態学会