| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-134 (Poster presentation)

微粒炭分析から見た秋吉台の草原の歴史

*小椋純一(京都精華大・人文),平舘俊太郎(独農環研),藤間充(山口大・農),柳由貴子(山口大・ 農),太田陽子(緑と水の連絡会議)

山口県中西部に位置する秋吉台は,早春の野焼きなどにより草原的環境が維持されているが,その草原の歴史はまだあまり明らかにされているとは言えない。本研究は,土壌中の微粒炭から,その草原の歴史などを考えたものである。

今回試料とした土壌は,秋吉台の中では比較的標高の高い西の西山(397m)と冠山(362m)の頂上近くのなだらかなところから採取したものである。試料は,地面の上部から下方に垂直に5cmごと(西の西山),あるいは土壌の色相などに応じて数cmごと(冠山)に採取した。

分析用土壌試料は,それぞれ1g(乾重)を常温の室内で水酸化カリウム溶液,過酸化水素,フッ化水素酸により処理することにより微粒炭を抽出した。抽出した微粒炭は,250μmと125μmのメッシュの篩を用いて篩分けし,それら2種の篩に残ったものをプレパラートとした。そのうち,主に観察したものは125μmのメッシュの篩に残ったもので,その観察は落射顕微鏡で行った。微粒炭は,すべての試料について400倍の倍率で,意図的にならないよう順次100個観察し,その表面形態ごとに8つタイプと「その他」に分類して検討した。数が100個に満たない場合には,できるだけ多くの微粒炭を観察した。一方,各試料中の微粒炭量は,プレパラート作成前にガラス板上に広げた微粒炭の面積を測定することにより測定した。また,一部の土層については,業者に依頼し,AMS法による年代測定を行った。

その結果,西の西山と冠山は,それぞれの地の植生が火の影響を比較的強く受けるようになるのは,ともに今から1000年前後前からと思われるが,草原の歴史は西の西山の方が冠山よりも古い可能性が高いと考えられる。


日本生態学会