| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-139 (Poster presentation)

比婆山における草本植物群落の遷移

*佐久間智子,中越信和(広島大・院・国際協力)

中国山地では、たたら製鉄により森林が利用されるとともに、運搬に使う牛馬を養うために採草地や放牧地として山々が利用されてきた。1960年代以降、農業形態や生活様式の変化により、草の利用が無くなるにつれ、草原の管理もされなくなり、今日では大部分の草原で遷移が進行している。人為の働きかけによって維持されてきた二次的自然には様々な絶滅危惧種が生育しており、半自然草原に依存する草原生の植物にも絶滅危惧種として指定されているものが少なくない。半自然草原を適切に保全するためには、現存する半自然草原の実態を把握することが必要である。現存する半自然草原において、過去の調査資料が存在する場合は限られており、半自然草原における長期的な種組成の変遷を明らかにした研究は少ない。

そこで本研究では、1974年から1978年に植生調査が行われた草本植物群落と同様の地点で植生調査を行い、過去と現在の群落組成を比較し、現在の草本植物群落の種組成の特徴を明らかにすることを目的とした。

調査地は広島県北東部に位置する比婆山連山とした。調査地の標高は920mから1,270mであり、冷温帯に位置する。

調査で得られた資料を解析した結果、過去の群落と優占種が異なる群落があり、オオバコ群落からシバ群落への移行やシバ群落への低木類の侵入などが見られた。各群落の特徴として、オオバコ群落は過去の群落に比べて出現種数が多かった。ススキ群落は過去の群落に典型的に見られたホクチアザミ、オオアブラススキ、キキョウ等が現在の群落には見られず、過去の群落と優占種が同じであっても、種組成が異なっていることが示唆された。


日本生態学会