| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-142 (Poster presentation)

多雪地帯のスギ林冠ギャップ下に植栽した広葉樹に発生した雪圧害と初期成長

*渡邉仁志,岡本卓也(岐阜県森林研)

多雪地域における針広混交林の造成を目的として,岐阜県郡上市大和町(標高800m)の50年生スギ人工林にできた冠雪害ギャップに落葉広葉樹4種を植栽し,植栽後3成長期の成長と雪圧害の影響を調査した。調査地は最深積雪150~200cmの多雪地帯で,植栽地は傾斜15°以下の緩傾斜地である。

2012年5月に,8年前にできた冠雪害ギャップ(面積130m2)を地拵え後,防獣柵で囲い,ホオノキ,ミズナラ,ミズキ,ミズメのポット苗を植栽密度6000本/haで20本ずつ単木混交で植栽した。植栽時および成長停止した毎年11月に植栽個体の毎木調査を行い,サイズと雪圧害による被害状況を調査した。また,毎年8月下旬に簡易日射フィルムを用いて各個体直上部で相対日射量を測定した。

各年の相対日射量の平均値は26~30%で,同じ林分内の冠雪害を受けていない箇所の値よりも高く,測点間のばらつきや各年の値の変動は小さかった。植栽個体の約40%が1冬期目の積雪により折損した。折損を受けた個体(被害個体)の一部は枯死したが,多くは萌芽,主幹交替により回復した。調査中一度も雪圧害を受けていない個体(健全個体)は25 ~70%で,ミズナラで多くホオノキ,ミズメで少なかった。このことから種により雪圧害の受けやすさが異なることが示唆された。健全個体はいずれの種でも樹高成長がみられた。調査中の樹高成長量を比較すると,健全個体の方が被害個体よりも大きかった。健全個体の成長量と相対日射量との間に相関がみられなかったことから,ギャップ下は4種にとって十分な光環境であったことが推測された。光環境の確保を考えると,ギャップ下における広葉樹植栽は有効な手法であり,逆に植栽によってギャップの速やかな修復も期待できる。しかし,初期の雪圧害が樹高成長の妨げになっている可能性があることから,その軽減対策が必要であると考えられた。


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