| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-179 (Poster presentation)

アオモンイトトンボにおいて活発な幼虫は、成虫になっても活発か?

*澤田浩司(福岡県立福岡高校), 粕谷英一(九大・理・生物)

アオモンイトトンボには雌の成虫の体色に二型が存在する。一方は褐色の雌型雌、他方は青緑色の雄型雌であり、常染色体上の限性遺伝によって決定されると考えられている。福岡市近郊では雌型雌と雄型雌の比が約3対1で安定する傾向にあり、負の頻度依存淘汰によって雌二型が維持されていると考えられる。さらに、野外個体群における雄型雌の頻度と、雄型雌および雌型雌の体サイズの差には負の相関があり、かつ体サイズの大きい雌は産卵速度が高い。したがって、雄型雌の頻度がより低下した場合には、雄型雌の体サイズがより大きくなって産卵数が増加することで適応度が高まることが期待される。成虫の体サイズは幼虫時の成長に依存するため、幼虫にもタイプ間での違いが存在する可能性がある。

羽化して雄型雌になる幼虫は、雌型雌になる幼虫と比べて水草の少ない環境を選好し、かつ水草を離れて餌の多い石底に滞在する時間が長いという傾向がある。もし活発に活動する幼虫が変態後も活発に活動するという傾向を示せば、幼虫期の「大胆さ」が成虫期にも継続することによって適応度に影響を及ぼす可能性がある。水槽内で単独飼育した雌の終齢幼虫と羽化後の雌成虫の行動をビデオに記録し、各個体3日分の平均値をもとに比較したところ、成虫の飛翔回数では二型間で差がなかったが、幼虫が水草を離れて石底に滞在する時間は雄型雌の方が長かった。さらに、幼虫の石底での滞在時間と成虫の飛翔回数について個体別で相関をとったところ、雌全体では両者に正の相関がみられた。したがって、幼虫の「大胆さ」は変態後の成虫に継続される性質をもつことがわかり、雌二型維持に影響を及ぼすことが示唆された。


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