| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-186 (Poster presentation)

ナガゴミムシ属の地下進出は系統樹のどこで起きたか?

*小粥隆弘, 長澤亮(筑波大・生命環境), 伊藤昇(川西市), 田中健太(筑波大・菅セ)

近年、地中トラップ(罠)の開発によって、斜面土砂移動地に未知の地中生動物が多数生息することが分かってきた(吉田 2012)。特に、オサムシ科ナガゴミムシ属(Carabidae: Pterostichus)が四国だけで23新種も報告された(Ito 2010, 2012)。これらの種は、頭部の肥大化、複眼の退化などの形態的特徴を持つ。しかし、地中生ナガゴミムシ属の著しい種分化がどのように起こったのかは、全く不明である。本研究では、1)地中トラップ調査が行われていない中部山岳地域における地中生ナガゴミムシ相の解明、2)日本全体の地中生ナガゴミムシ属の種分化が、ナガゴミムシ属の中で何回起こったのかを分子系統解析で明らかにすることを目的とした。

菅平周辺・八ヶ岳・南アルプス・奥秩父の4山域で、2014年の夏期(6~8月)と秋期(8~10月)に調査を行った。夏期調査では、各山域の4~8斜面土砂移動地を調査地とし(計28調査地)、各調査地に深度50 cmの穴を2 m以上の間隔を空けて8つ堀り、各穴に1個の地中トラップを設置した。秋期調査では、1山域あたり斜面土砂移動地を2~3選んで調査地とした(計11調査地)。各調査地において、3~6穴を2 m以上の間隔を空けて設け、各穴の深度0・25・50 cmに地中トラップを1個ずつ設置した。全てのトラップは設置から約1か月後に回収した。

同定作業の途中段階で、13種51個体のナガゴミムシ属が採集されている。このうち、地中生の形態的特徴を持つ5種27個体は、新種の可能性が高い。今回の採集種と過去に採集された四国・対馬・中部山岳地域の地中生ナガゴミムシ属10種の各種1-2個体を対象に、mtDNA・核DNA計2-3遺伝子の塩基配列を決定し、分子系統樹を作成し、その結果を発表する。


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