| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-191 (Poster presentation)

スバールバルのコケ-キョクチヤナギ群落土壌の硝化・脱窒能および土壌理化学性との関係

*林健太郎(農環研), 下村有美(協同乳業), 森本晶(北農研), 内田雅己(極地研), 中坪孝之(広島大), 早津雅仁(農環研)

本研究の目的は,スバールバル諸島ニーオルスンのツンドラ土壌の硝化・脱窒能とこれらの土壌理化学性との関係,また,硝化微生物(細菌・古細菌)のフロラを明らかにすることである.調査地の主な植生はクラスト(有機物,地衣類,および藍藻からなる地表の薄い被覆)およびコケ-キョクチヤナギ群落である.コケ-キョクチヤナギが様々な被度で覆う12箇所の表層土(A層)を採取し,植被のない他の場所においてクラストを剥いで下層土(B層)を採取した.硝化能(AOP)は基質添加振とう培養(10℃)による亜硝酸生成速度として,脱窒能(DeP)はアセチレンブロック-基質無添加培養(10℃)による一酸化二窒素生成速度として定量した.表層土のAOPはクラストのみの地点で最小であり(2.3±0.7 ng N g–1 dry soil hr–1),コケとキョクチヤナギに完全に覆われた地点で最大であった(14.1±1.8 ng N g–1 hr–1).値は小さいものの下層土もAOPを示した(1.1±0.1 ng N g–1 hr–1).表層土のDePもまたクラストのみの地点で最小であり(6.9±3.5 ng N g–1 hr–1),コケとキョクチヤナギに完全に覆われ,かつ,厚い有機物層を伴う地点で最大であった(59.5±15.3 ng N g–1 hr–1).下層土のDePは表層土と比べてごく小さな値であった(0.8±0.0 ng N g–1 hr–1).AOPはコケ層の厚さと正の相関を示し,DePは有機物層の厚さおよび土壌含水率と正の相関を示した.


日本生態学会