| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-200 (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における窒素無機化速度の時空間変動

*吉竹晋平,吉竹彩子(岐阜大・流圏セ),飯村康夫(滋賀県立大・環境科学),大塚俊之(岐阜大・流圏セ)

土壌微生物による窒素の無機化・硝化過程は森林生態系における炭素・窒素循環などを考える上で重要であるが、同一林分内における微地形による影響や、積雪期を含む冬季における動態については不明な点が多い。本研究では、複雑な微地形を持つ冷温帯落葉広葉樹林を対象に窒素無機化速度(MR)および硝化速度(NR)の測定を行い、同一林分内における微地形の影響を踏まえた空間変動解析と生長・非生長期間の比較を行った。

乗鞍岳山麓の冷温帯落葉広葉樹林(岐阜大学高山サイト)に既設の1ha永久調査区は10m間隔で区切られて100個のサブコドラートに分割されており、これらは5つの微地形に分類されている。これらのサブコドラートにおけるMR・NRを、イオン交換樹脂を用いた現地培養法(レジンコア法)に基づいて、生長期間(2013年5月~11月)および非生長期間(2013年11月~2014年5月)に分けて測定した。

年間のMR・NRは微地形によって大きく異なっており、いずれも谷底部で最も高かった。より広域スケールで調べた例でも同様の傾向が報告されているが、同一林分内においても微地形によって異なる土壌の温度・水分環境が影響していると考えられた。生長期間におけるMR・NRは非生長期間よりも高かったが、この期間では土壌中の無機態窒素プールは減少していた。このことから、生長期間においては無機化・硝化により生じた硝酸態窒素が植物根によって栄養塩として吸収・消費されていると考えられた。一方、非生長期間におけるMR・NRは年間値の約34–37%を占めており、植物根による吸収が少なく、かつ積雪に覆われることで比較的安定した土壌温度・水分条件の下で、生成した無機態窒素が蓄積されることが明らかとなった。


日本生態学会