| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-204 (Poster presentation)

落葉広葉樹林の長期炭素収支動態推定

小南裕志(森林総合研究所),安宅未央子(京都大学),吉村健一(森林総合研究所),檀浦正子(京都大学)

日本長期生態学研究ネットワーク準サイト(JaLTAR)とJapan Flux Networkサイトである山城試験地(落葉常緑広葉二次樹林、京都府木津川市)において1994年から5年ごとに行われている全木毎木調査が20年目を迎えたため、その報告を行う。またその間行われてきた、TowerFluxを含めた、各種フラックス観測結果を組み込むことにより日本に広く分布する落葉広葉樹二次林の炭素蓄積-放出過程の長期的な変動とその要因に関する検討を行う。本試験地は田上山と総称される山塊の一部で藤原京、平城京の造営時代からの、長期間の過剰伐採によって明治初期まではげ山化していた。1873年にヨハネス・デレーケらの指導による淀川の河川改修の一部としてアカマツによる植生回復が図られアカマツ林化したが1980年代初頭にマツ枯れによる大規模な攪乱で現在のコナラ-ソヨゴを優占樹種とした広葉樹林化したと考えられる。2013年 より優先樹種であるコナラがカシノナガキクイムシによる急速な被害(ナラ枯れ)により再び大規模な攪乱影響を受け始めている。これらの歴史的な状況を踏まえ、過去情報(土壌炭素、年輪解析、残存枯死木被害履歴など)と現在の各種フラックス観測(タワー、葉群、枝幹、根、枯死木、落葉、菌根菌など)を組み合わせることによって未知のパラメータ導入を可能な限り排除して長期群落炭素収支推定を行った。樹体炭素蓄積速度(ΔW)は1994年から0.9~1.5tC/ha・yrまで漸増を続けており林齢70年でも明瞭な減衰は見られなかった。優占樹種は群落面積の30%程度しか占めていないものの個体数は漸減しながら全炭素蓄積に占める寄与率は漸増した。複雑な樹種構成を持つ森林においても群落形成初期の段階で高木化できる樹種の侵入数に数十年後の炭素蓄積能が依存する可能性がある。


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