| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-035 (Poster presentation)

奄美大島の干潟における底生生物の空間分布

*緒方沙帆(鹿児島大院・水産),上野綾子(鹿児島大院・水産),佐藤正典(鹿児島大・理),山本智子(鹿児島大・水産)

一般に、潮汐に伴って環境が変化する潮間帯では、高度に伴う環境勾配が底生生物群集の空間変異を作り出すことが知られている。地形がなだらかな干潟では、河川の影響など異なる方向の環境勾配が同時に作用していると考えられるが、干潟内の環境変異及び底生生物群集の変移に着目した研究は少ない。そこで本研究では、干潟全域を底質環境の調査によって分類し、それに基づいて干潟の底生生物を対象にした定量調査を行うことにした。この調査によって、底生生物群集の空間変移と環境の関係をとらえるとともに、奄美大島の干潟底生生物相に関する基礎的情報の集積に貢献することを目的とする。

調査は鹿児島県奄美市笠利町大字手花部の手花部干潟で行った。環境の調査では、GPSで緯度・経度1秒ごとを測定し、計147地点において底質環境を調査した。また、底質調査の結果を用いてクラスター解析を行い、環境を分類した。定量調査では1本のラインができるだけ多くのグループを通るようにトランセクトラインを5本設定し、その上に計24ステーションを設置した。ステーション毎にコアを3つ設置し、コア内の堆積物を1mmメッシュの篩でふるい生物を採集した。

底生生物は計88種、584個体採集された。各ステーションを単位として群集解析を行った結果、ライン毎にまとまりが見られた。その中でも、河川沿いのラインと底質の下にサンゴ礫があると思われる中央部のラインの2つに区分された。また、潮間帯の上部と中下部でも分かれる傾向が見られた。このように、干潟内部では海岸線に対して垂直方向と平行方向の両方で底生生物相の変移があると考えられる。また、手花部干潟においては、高度及び河川との関係や底質下の環境の違いが群集組成に影響していると思われる。


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