| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-044 (Poster presentation)

変質する資源を利用する消費者の種間関係:競争か片利共存か?

*川田尚平(東邦大・理),瀧本岳(東邦大・理)

変質する資源(例えば、動物の糞や生物の死骸など)は自然界に多く存在し、多種多様な生物が利用している。変質する資源は自然に物理的な改変・変質を経るだけでなく、生物が資源を使用することで改変・変質を促進していることがある。しかし、このような生物は変質資源の利用者に対して必ずしも正の影響を与えているとは限らない。資源を改変する消費者(以下、改変者)と変質後の資源を利用する消費者(以下、消費者)の関係においては、改変者が消費者に正の影響を与える「片利共生関係」と負の影響を与える「片害競争関係」が考えられる。本研究では、改変者と消費者の関係を決める条件を調べるため、資源変質の数理モデルを導き、解析を行った。解析の結果、資源流入量が中程度以上の場合、資源の消失率が高く、自然改変率が低い資源では改変者と消費者の関係は「片利共生関係」となった。また、資源流入量が高くなるほど、改変者の能力が高くなければ、改変者と消費者の関係は「片害競争関係」となった。消失率が高く、改変者の改変率が高いと改変者と消費者の関係は、消費者が改変者なしでは生存できない「絶対片利共生」となった。資源流入量が中程度以下の場合、消費者の死亡率が中程度だと、消費者は改変者がいない環境には侵入できなかった。しかし、資源流入量が中程度以上の場合、消費者の死亡率が中程度以上だと、消費者は改変者がいる環境には侵入できないことが分かった。本研究の結果より、資源特性が改変者と消費者の関係を決めるうえで重要であることが分かる。資源の消失や変質の速度などは、資源の種類、季節によって変わると言われている。本研究は、このような特徴を持つ資源を使用する生物間の相互作用の解明に貢献できるかもしれない。


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