| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-055 (Poster presentation)

伊勢湾周辺域におけるホトケドジョウの遺伝的集団構造

*伊藤玄(岐阜大院・連農),向井貴彦(岐阜大・地域),古屋康則(岐阜大・教育)

東海地方の伊勢湾・三河湾周辺(伊勢湾周辺域)は,ウシモツゴ,ヒメタイコウチ,シラタマホシクサなど陸水域に生息する複数の分類群において固有・準固有種が知られている.また,広域分布種でも東海地方には遺伝的に固有な集団が知られており,固有性の高い陸水生物相が発達している地域である.さらに,淡水魚のウシモツゴやカワバタモロコなどでは,伊勢湾周辺域内でも遺伝的分化が見られることから,様々な陸水生物を用いて比較系統地理学的解析を行うことにより,地域生物相全体の成立過程を解明できると考えられる.そこで,本研究では,上記東海地方固有種と同様な環境に生息するホトケドジョウにおける遺伝的集団構造を調査した.伊勢湾周辺域を網羅するように,丘陵地の湿地や小河川など18地点で143個体のホトケドジョウを採集し,ミトコンドリアDNAのcytb領域の部分塩基配列約1000bpを決定した.DDBJに登録されている塩基配列を加えて系統樹を推定した結果,伊勢湾周辺域のホトケドジョウは,伊勢湾周辺に広く分布する集団(伊勢湾集団),三河地方と静岡県西部に分布する集団(三河・静岡集団),地域固有の桑名集団と中津川集団の4つの地域集団にわけられた.さらに,伊勢湾集団は5つ,三河・静岡集団は2つの地域に細分された.桑名集団のハプロタイプは近畿地方の集団に近縁だったことから,伊勢湾周辺域系統とは別に近畿地方から侵入し,隔離分布されてきた集団である可能性が示された.中津川集団は,伊勢湾周辺域系統の中で最も初期に分化したと推測される.


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