| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-061 (Poster presentation)

スギ人工林におけるヒガラの繁殖特性

*近藤 崇,早瀬晴菜,肘井直樹(名古屋大・生命農・森林保護)

日本の森林面積の約4割を占めている針葉樹人工林の多くは、樹種や林齢が単一的であり、生活・営巣空間や食物資源の不足から、多くの森林性鳥類にとって、繁殖や生息に不適な環境と考えられている。人工林に少ない鳥類グループの一つとして、樹洞営巣性であるシジュウカラ科鳥類(カラ類)が挙げられる。日本のカラ類の中で、シジュウカラParus minorやヤマガラPoecile variusが広葉樹林を好むのに対して、ヒガラPeriparus aterは、針葉樹林を好むことが知られている。しかし、ヒガラは前2種のカラ類と同様に、繁殖期には鱗翅目幼虫やクモ目を主要な食物とすることが報告されていることから、針葉樹林ではあってもこれらの食物が少ない人工林においては、ヒガラの繁殖には適していない可能性が考えられる。今回、日本の主要造林樹種であるスギの人工林に設置した巣箱において複数つがいのヒガラが営巣したため、その繁殖特性や食物利用を調査した。

調査は、愛知県豊田市にある名古屋大学稲武フィールドの約55年生のスギ人工林で行った。本調査地には、林内や周縁の尾根、沢沿いの一部に、広葉樹パッチが点在しており、2011年から巣箱を設置している。これらを利用して、2013年に4つがい、2014年に5つがいのヒガラが営巣した(捕食を除く)。これらのつがいについて、一腹卵数、巣立ち雛数を調査した。また、雛が12~14日齢時に、巣箱の出入口をデジタルビデオカメラで約9時間連続撮影した。ビデオ画像から、親鳥が運んできた食物の種類、時刻、回数を解析した。

一腹卵数は、8個、9個がそれぞれ4つがい、5個が1つがいであり、巣立ち率は平均92%であった。食物構成では、鱗翅目幼虫やクモ目に加えて、直翅目を比較的高い割合で利用するつがいもみられた。本発表では、繁殖特性や食物利用を、各つがいの営巣場所の周辺環境との関連から考察する。


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