| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-066 (Poster presentation)

アリスイにおける卵の生存見込みと抱卵開始時期の関係

*加藤貴大(総研大・先導科学),松井晋,橋間清香,土橋亮太,上田恵介(立教・理)

鳥類は一腹卵を1日~数日に1卵ずつ産卵し,卵の生存率は親鳥が抱卵を開始する時期に依存する.抱卵開始前に巣に放置された卵は細菌感染や発育ゼロ点以上の外気温が原因の不完全な胚発生により生存率が低下することが知られている.一方で抱卵開始後では,一腹卵の非同時孵化が生じるため遅れて孵化した雛は雛間競争で不利になり育雛期および巣立ち後の生存率は低くなる.このような場合,雌親は(i)生存見込みが高い卵により投資する,(ii)産卵順によって異なる生存率の格差を埋めるような投資をする,という2つのシナリオが考えられる.このような卵への投資配分は,特に一腹卵数が多い種において顕著な傾向を示すだろう.本研究では,卵の生存データを収集し,これらの仮説を検証した.アリスイJinx torquillaを対象種とし,秋田県大潟村において2012年と2013年の4月から8月に調査を行った.村内の防風林に巣箱を設置し,卵の産卵順番や体積,孵化成功や巣立ち成功を記録した.抱卵開始時期は巣内の温度ロガーと卵の温度から判断した.野外調査の結果,一腹卵数は7から13だった.抱卵開始日を0日として補正した産卵順番と卵の巣立ち成功との関係は一山型の放物線となり,抱卵開始日近くに産卵された卵ほど巣立ち成功しやすいことが示された.抱卵開始日を0日として補正した産卵順番と卵体積の関係は単調増加を示した.抱卵開始前後によって死亡原因が異なることから,投資戦略が抱卵開始前後で異なることが考えられる.しかたがって二時期を分けたより詳細な分析を行い,抱卵開始時期と卵への投資量,そして産卵順ごとの巣立ち成功との関係を明らかにする予定である.


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