| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-073 (Poster presentation)

砂州生態系の洪水撹乱への短期的応答:フラッシュ放流でゴミムシは減るか?

*今井悠,根岸淳二郎,植村郁彦,三浦一輝(北大・地球環境),照井慧(北大・農),赤坂卓美(帯広畜産大)

河川生態系において、降雨や融雪に伴う流量変動は河畔域の生物に大きな影響を与える。特に、冠水時の撹乱により維持される砂礫堆は水位の上昇に伴い水没あるいは基質が移動し、大きな環境変化が頻繁に起こる場所である。砂礫堆にはオサムシ科甲虫などの地上徘徊性生物が生息しているが、それら陸域生物の洪水撹乱に対する短期的な回避、および再定着の過程は明らかでない。本研究は北海道東部の十勝川流域の札内川において、札内川砂礫堆の優占種であるオサムシ科甲虫ノグチアオゴミムシ(以下ゴミムシ)の洪水への応答を明らかにした。自然洪水を予測し計測に用いることは困難であるため、2014年6月24日に札内ダムで行われたフラッシュ放流の前後3日間を計測期間とし、ピットフォール法・マークリキャプチャ―法を用いて島上の砂州(中州)と陸に繋がる砂州(寄洲)の合計8カ所でゴミムシを捕獲した。洪水中すべての砂州は水中に没したが、放流による水位上昇に対して歩く、飛ぶ、泳ぐ、潜る、あるいは草本類に掴まるなどの逃避行動が見られ、飛翔して植生帯に入っていく個体が多数見られた。中州・寄洲ともに水が引いた直後(1日以内)からゴミムシは捕獲された。中州では放流後に捕獲数が増え、寄洲では放流後の捕獲数は減る傾向にあった。また、寄洲上のゴミムシは砂礫堆の水際に多く分布しており、放流前・放流後ともに上流側の水際で特に多く捕獲された。少数だが放流前後ともに同じ砂州で捕獲された個体もいた。以上より、ゴミムシは平水時には水際に集中分布しているが洪水に対しては素早い逃避行動を取り、水位の低下とともに直ちに砂礫堆に戻って来ることで洪水撹乱を回避していることが示唆された。


日本生態学会